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特集 エキスパートが教える 小児の薬物治療
Ⅲ.疾患別
K.社会心理学的疾患
うつ病・うつ状態
Depression, depressivestate
宇佐美 政英
1
Masahide Usami
1
1国立国際医療研究センター国府台病院子どものこころ総合診療センター児童精神科
キーワード:
うつ病
,
うつ状態
Keyword:
うつ病
,
うつ状態
pp.857-861
発行日 2023年11月30日
Published Date 2023/11/30
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000001352
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1 疾患概念
抑うつ状態は誰でも経験する可能性があり,とくに思春期の子どもたちにとっては無自覚ではあるが,身近な感覚であることを忘れてはならない。たとえば,部活動やテストでの失敗や失恋などで一時的にうつ状態に陥ることはごく当たり前に理解することができ,当然それらは精神障害としての扱いを受けることはない。うつ病は生物学的変化とともに精神疾患としての特異性を備えた病態像を示し,1899年にクレペリンが躁うつ病の一つとして分類して以来,現代まで続く代表的な精神疾患の一つである。かつては,子どもにうつ病は少ないと考えられてきたため,現在においても成人期のうつ病の病態がその中心となっている。しかしながら,操作的診断基準の普及とともに,近年ではこれまでに考えられていたよりも子どもにうつ病が多く存在していると考えられ,その存在に注目が集まってきている。児童・思春期のうつ病の有病率は一般的には12歳未満の児童期では0.5~2.5%,思春期(12~17歳)では2.0~8.0%の有病率である。児童期では性差はないが,思春期になると女性の割合が多くなる。わが国では小学校4年生~中学1年生までの一般児童において大うつ病性障害の診断基準を満たした児童が1.5%,双極性障害の診断基準を満たした児童が1.1%であり,中学校1年生では大うつ病が4.1%に認め成人と同程度である。
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