特集 分子標的薬を極める
各論
神経・筋疾患 分子標的薬が変える結節性硬化症診療
九鬼 一郎
1
KUKI Ichiro
1
1大阪市立総合医療センター小児脳神経内科小児青年てんかん診療センター
pp.288-291
発行日 2023年2月1日
Published Date 2023/2/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000776
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結節性硬化症の概要と最新の診断基準
1.結節性硬化症の分子病態
結節性硬化症(tuberous sclerosis complex:TSC)は,全身臓器(脳,腎臓,肺,皮膚,眼球など)に過誤腫が形成される常染色体顕性(優性)遺伝形式をとる神経皮膚症候群である1)。原因遺伝子であるTSC1またはTSC2遺伝子に機能喪失変異が生じることにより発病する。これらの遺伝子産物は複合体を形成してmammalian target of rapamycin(哺乳類ラパマイシン標的蛋白質:mTOR)シグナル伝達系の抑制的な役割を担う。mTORシグナル伝達系は細胞分裂や血管新生に関連するといわれており,TSCではその抑制機構が低下しmTOR活性が上昇することで,過誤腫性の病変や細胞増殖亢進による腫瘍形成などが多臓器に生じ,多彩な症状が全身性に出現する。
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