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はじめに
重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)は神経筋接合部に存在する蛋白〔アセチルコリン受容体(acetylcholine receptor:AChR)やmuscle-specific tyrosine kinase(MuSK)〕に対する自己抗体が産生されることで神経筋伝導が障害される自己免疫疾患である1)。約80%のMG症例でAChR抗体が検出され,約3~5%のMG症例ではMuSK抗体が検出される。AChR抗体はアセチルコリンのAChRへの結合阻害,AChRの内在化の誘導,補体活性化による運動終板の破壊によって神経筋伝導を障害すると考えられている2)。MuSK抗体はMuSKとagrin-LDL receptor related protein 4複合体の結合を阻害し,AChRの集簇化を抑制することによって神経筋伝導障害をきたすと考えられている3)。MGではステロイド薬や免疫抑制薬の投与,胸腺摘除術,血漿浄化療法や免疫グロブリン大量静注療法,ステロイドパルス,早期速効性治療1,4)などが治療として行われるが,寛解状態を継続して得ることは難しく5),新規治療開発が求められている。近年,補体,胎児性Fc受容体(FcRn),B細胞,サイトカインをターゲットとした分子標的薬の開発が盛んに進められている(図)。日本のMGガイドライン2022では,「複数の経口免疫治療薬による治療,あるいは経口免疫治療薬とくり返す非経口速効性治療を併用する治療」を一定期間行っても「十分な改善が得られない,あるいは副作用や負担のため十分な治療の継続が困難である」症例が難治性と定義され,分子標的薬の主なターゲットと考えられる。本稿ではMGに対する新規治療である分子標的薬について紹介する。
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