Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
1 基本病因,発症機序
Gaucher病(Gaucher disease)は,先天代謝異常症の一つで,ライソゾームに存在する加水分解酵素の一つであるグルコセレブロシダーゼ(Glucocerebrosidase:GBA,または酸性β-グルコシダーゼともよばれる)の遺伝的欠損または活性低下により発症する。GBAは基質であるグルコセレブロシド(Glucocerebroside:Glc-Cer)をグルコース(Glc)とセラミド(Cer)に分解する働きを有するため,Gaucher病では,おもに肝臓や脾臓などの臓器で,マクロファージ系の細網内系細胞にGlc-Cerが蓄積し,貧血,血小板減少,肝腫大,脾腫,骨合併症などを呈する(図)。一方,中枢神経系ではグルコシルスフィンゴシン(Glucosylsphingosine:Glc-Sph)が蓄積すると考えられており,先に示した全身症状に加えて神経症状を合併する場合があり,神経症状の有無で3つの病型に分類される(表1)1)。神経症状を呈さない非神経型である1型,若年齢で発症し急速に進行する急性神経型である2型,そして,2型よりは神経症状の発現が緩徐に進行する亜急性神経型の3型に分類される。ただし,2型と3型は明確な区切りが存在するわけではない。オランダの報告によると,有病率は10万人あたり1.16人と推定されており,その90%は1型である2)。GBA遺伝子は,1番染色体上に存在し,現在までに400以上の遺伝子変異が報告されている。遺伝形式は,常染色体潜性(劣性)遺伝をとり,性差はないが,人種差がある。ユダヤ人Gaucher病患者では,GBA遺伝子の軽症型に関連するN370S変異が約70%を占めており,日本人Gaucher病患者ではこの変異を認めず,重症型に関連するL444PとF213Iの変異が約60%を占める。3型と診断された日本人Gaucher病患者のうち約43%は,初診時に1型と診断されており,そのほとんどはL444PとF213I変異を保有していたと報告されている。GBA遺伝子変異の種類により,臨床病型と相関するとも考えられており,日本人Gaucher病患者では欧米人Gaucher病患者に比較して神経型や重症型が多い3, 4)。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.