特集 今知っておきたいゲノム医療と遺伝子治療―基礎から臨床まで
総論
遺伝子導入法
大橋 十也
1
OHASHI Toya
1
1東京慈恵会医科大学医学部看護学科健康科学疾病治療学
pp.269-273
発行日 2022年2月1日
Published Date 2022/2/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000055
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遺伝子治療とは
遺伝子治療の定義であるが,遺伝子治療等臨床研究に関する指針(厚生労働省 平成31年2月28日制定)によると,① 遺伝子または遺伝子を導入した細胞を人の体内に投与すること,② 特定の塩基配列を標的として人の遺伝子を改変すること,③ 遺伝子を改変した細胞を人の体内に投与すること,とある。① はウイルスベクターなどで直接遺伝子を体内に導入すること,もしくは造血幹細胞,T細胞,脂肪細胞など,いったん細胞を体外に取り出して,やはりウイルスベクターなどで,その細胞に遺伝子を導入し体内に戻すことを意味している。現在,もっとも多く行われている遺伝子治療がこれに相当する。前者をin vivo法,後者をex vivo法とよぶ。②,③ は現在話題になっているゲノム編集にあたる。つまり治療用の遺伝子を導入するのではなくて,ゲノム上の遺伝子を改変することも遺伝子治療に含まれるわけである。たとえば遺伝性疾患の場合,特定の遺伝子に病的な変異があり,① の場合は,正常の遺伝子を導入するが,病的遺伝子はそのままなので機能を獲得する病的遺伝子変異による疾患には応用できない。②,③ のゲノム編集は病的遺伝子変異を正常に戻す,もしくはその遺伝子を機能できなくすることにより治療する。つまり,機能獲得型の病的遺伝子変異にも応用可能である。まだゲノム編集による遺伝子治療は始まったばかりで臨床応用されているものは少ない。また上記の指針ではトピックスの稿で述べられているようにウイルス療法の記載はないが,一般的にウイルス療法も遺伝子治療に含まれる場合が多い。
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