今月の主題 臨床医のための遺伝子工学
遺伝子工学の臨床への応用
基礎知識—遺伝子工学とは?
生体への遺伝子導入の方法
山野 智基
1
,
金田 安史
1
1大阪大学細胞生体工学センター細胞構造機能研究部門
キーワード:
遺伝子導入効率と発現効率
Keyword:
遺伝子導入効率と発現効率
pp.2130-2133
発行日 1997年11月10日
Published Date 1997/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904805
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遺伝子治療は難治性疾患に対する画期的な治療法として1990年代に大きな期待を集めて登場した.しかし日本では,本格的な臨床治験は行われておらず,また遺伝子治療先進国である米国でも従来の治療にとって代わるだけの評価は得られていない.現在の遺伝子治療における最大の問題点は結局のところ,生体への遺伝子導入法が確立していないことに尽きる.すなわち現在の技術では,①目的とする組織にのみ遺伝子を導入すること,②高い効率で遺伝子を導入し長期に遺伝子発現を持続させること,③導入した遺伝子発現をコントロールすること,はできておらず,これらを克服するために遺伝子導入ベクターの開発・改良とともに,発現ベクターの研究も進められている.
本稿では,ウイルスベクターとして現在最も広く用いられているレトロウイルスベクター,アデノウイルスベクター,選択的な遺伝子組み込み機能を持つAAV(adeno-associated virus:アデノ随伴ウイルス)ベクターを取り上げ,また非ウイルスベクターとしてリポソーム法,そして大阪大学で開発されたHVJ(hemagglutinating virus of Japan:センダイウイルス)リポソーム法,レセプター介在性遺伝子導入法などについて述べ,最後に発現ベクターについて簡単に触れる.
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