特集 眼科における最新医工学
III.治療への応用
遺伝子導入
池田 康博
1
1九州大学大学院医学研究院眼科学分野
pp.268-275
発行日 2005年10月30日
Published Date 2005/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100223
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はじめに
10年以上前の話になりますが,私が眼科医になろうと決心したのは医学部6年生の12月,ちょうど卒業試験が終わった頃でした。漠然と,眼球の移植か人工眼球(近未来を描いた映画に登場するロボットの眼のようなイメージ)の開発をやりたいと。当時,恥ずかしながら眼科学の知識はほとんどゼロ。当然それらの研究状況がどうなっているのかも知りませんでした。当時私の面接を担当された先生方は,夢みたいなことを考えているなと思ったに違いありません。
私自身も研修医となり眼科学を学習するようになってから,自分のイメージしていたものが現実離れしたものであることを少しずつ認識するようになりました。さて,大学院に行って何を研究しよう? 眼球を取り替えることは難しい。では,もともとある眼の中に何か新しく機能をもつものを入れられないだろうか? たどり着いた答え,眼に入れる新しいものとは,細胞(神経幹細胞)でもなく機械(人工網膜)でもなく,遺伝子だったのです。医局の大先輩である坂本泰二先生(現・鹿児島大学眼科教授)のご活躍を目の当たりにして,遺伝子治療の可能性にどんどんと引き込まれていってしまいました。それから今日に至るまで,眼科領域の疾患に対する遺伝子治療の臨床応用という目標(夢)をもちながら研究を進めています。
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