特集 今知っておきたいゲノム医療と遺伝子治療―基礎から臨床まで
総論
エピジェネティクスとは―その分子的実体とゲノム医療との関連
秦 健一郎
1
HATA Kenichiro
1
1国立成育医療研究センター研究所周産期病態研究部
pp.264-268
発行日 2022年2月1日
Published Date 2022/2/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000054
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はじめに
エピジェネティクスとは,「ゲノムDNA配列を変えることなく遺伝情報の発現を制御する分子機構,またはその学問分野」と定義される。ゲノム(ヒトの発生と生命維持に必要な全遺伝情報)は正確に複製され,文字どおり親から子へと特徴が「遺伝」することにより,細胞分裂後も各細胞や臓器は機能を失わずに個体を維持することができる。一方で,エピゲノム(エピジェネティックな情報全体)は,DNAやヒストンの化学的修飾などにより,遺伝子ではないにもかかわらず細胞分裂を経て「遺伝」する。またエピゲノムは,環境因子により変化し,遺伝子の配列を変えずに個体の遺伝子発現に長期にわたり(あるいは世代をこえて)影響することがある。本総説では,エピジェネティクスの背景とゲノム医療とのかかわりについて,筆者らの知見を交えて概説する。
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