特集 DOHaDと周産期医療
DOHaDの基礎研究・疫学研究
エピジェネティクスとは
秦 健一郎
1,2
HATA Kenichiro
1,2
1群馬大学大学院医学系研究科分子細胞生物学
2国立成育医療研究センター研究所
pp.1470-1475
発行日 2024年11月10日
Published Date 2024/11/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001776
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ゲノムとエピゲノム
エピジェネティックな現象(遺伝子を介さない遺伝現象)は,育種の分野では経験的によく知られており,父ロバと母ウマの交配で生まれるラバは産業動物として有用だが,逆の組み合わせだと形質が大きく異なることが有名である。そのメカニズムは長らく不明であったが,1980年代の非常に洗練された発生工学的実験1)により,精子由来のゲノムと卵子由来のゲノムは等価ではないことが明示された。そこからインプリンティング遺伝子のような限られた領域の解明は進んだものの,ゲノム全体のエピゲノム(エピジェネティックな情報全体)は未知の部分が多かった。その後,2003年のヒトゲノムプロジェクト完了が契機となり,ゲノムに加えて網羅的エピゲノムの解明も進みつつある。ヒトゲノムプロジェクトによってほぼすべての遺伝子および非遺伝子領域の配列が公的データベースに公開されたことで,これまでは暗闇を手探りで進んでいた状況から突然Googleマップが使えるようになった,と例えても決して誇張ではないくらいに,文字どおり一夜で状況が一変した。また,ゲノム解析と並行し,ハイスループットな測定機器や解析試薬が劇的にコストダウンし,主に次世代シークエンサーを活用したさまざまなエピゲノム解析手法が実用化されている。
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