今月の臨床 絨毛と胎盤をめぐる新知見
絨毛研究最前線
2.胎盤形成のエピジェネティクス
秦 健一郎
1
1国立成育医療研究センター研究所周産期病態研究部
pp.243-247
発行日 2011年3月10日
Published Date 2011/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102592
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はじめに
2003年に終了したヒトゲノム計画は,10年以上の月日と数十億ドルをかけた国家プロジェクトであったが,同計画の成果により,遺伝子解析は劇的に身近なものとなった.今日では,DNAを解析業者に渡してしまえば,およそ2か月・500万円で全塩基配列解析が終了する.さらにこれから数年で,解析費用は1,000ドル程度に値下がりすることがほぼ確実視されている.実験の手間と費用のみに関していえば,全塩基配列解析はもはや特殊な検査ではなくなってきた.
その一方で,たとえ全塩基配列が解読されたとしても,解明できない生命現象や疾患が多数存在する.さらなる医学の発展には,いわゆるポストゲノムシークエンス時代の新たな研究分野の進展が不可欠である.そこで本稿ではエピジェネティクスを取り上げ,胎盤の発生分化に関与するエピジェネティクスの基礎と,疾患との関連についての知見を紹介する.
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