特集 妊娠高血圧症候群2024
基礎編:病態機序
炎症―NLRP3インフラマソーム―
小澤 廉
1
,
白砂 孔明
1
OZAWA Ren
1
,
SHIRASUNA Koumei
1
1東京農業大学農学部動物科学科
pp.1345-1348
発行日 2024年10月10日
Published Date 2024/10/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001746
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HDPには炎症が関与している
次世代を残すためには妊娠という現象が必要不可欠であり,そこには適切な炎症応答が関与している。一方,免疫機構の破綻で過剰な炎症性サイトカインが産生されることにより,妊娠高血圧症候群(HDP)をはじめとするさまざまな異常妊娠が起きると考えられている。妊娠高血圧腎症(PE)を含むHDPには病原体などの感染が関与していないことが多いため,どのように炎症が惹起されるのかは不明である。HDPを発症した妊婦は高血圧を呈し,胎盤機能異常や胎児発育不全などが誘発されるが,出産後に母体症状は軽快するため胎盤の存在が密接に関連している。HDPの発症の根幹として,胎盤が慢性的な低酸素状態に陥ることで小胞体ストレスや酸化ストレスが発生し,それにより炎症性サイトカインの増加や免疫細胞の活性化が起きることが想定されている。その結果,抗血管新生因子である可溶型fms様チロシンキナーゼ1(sFlt-1)や可溶型endoglin(sEng)が母体に大量に流出することで血管内皮障害が惹起され,病態が出現すると理解されている1)。病原体が関与しない炎症は「自然炎症」と認識され,その誘導経路の一つであるインフラマソームがHDPの発症に関与することがわかってきている。
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