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ほとんどのサイトカインは通常の分泌タンパクと同様に,合成されると小胞体とゴルジ装置を経由して細胞外に分泌される。しかし,インターロイキン(IL)-1βとIL-18は前駆体として合成され,異常がなければ前駆体のままで細胞質にとどまる。そして,感染などによって細胞が危険な状態になると切断/活性化されて細胞質から細胞外に放出される1)。本解説のテーマであるインフラマソーム(inflammasome)とはIL-1βとIL-18前駆体を切断/活性化する分子装置のことである。この名称は‘inflammation’とギリシャ語で「体「を表す‘soma’に由来する。インフラマソームの概念がスイスのTschoppのグループから提唱されたのが2002年であるが,この概念は免疫学に対して強いインパクトを与えた2)。免疫の分野ではIL-1βとIL-18前駆体の切断酵素はインターロイキン変換酵素と呼ばれ,非常に有名な酵素であったにもかかわらず,長い間その活性化調節機構は謎であった3)。しかしインフラマソームの概念によってその謎解きの糸口が示されたのである。事情は後で述べるが,現在ではインターロイキン変換酵素という名称は廃れてしまい,カスパーゼ-1(caspase-1)という呼び方が一般化した。この解説ではインフラマソームの概念を要約するとともに,その構成員であるASCについて少し詳しく説明したい。
インフラマソームの問題はリウマチや蕁麻疹など炎症疾患と深くかかわっており,最近ではⅡ型糖尿病との関係が指摘され大きな注目を集めている4,5)。今後,原因不明の自己免疫疾患に対する新たな治療法開発が期待できる分野でもある。研究の歴史を振り返ると,インフラマソーム研究はアポトーシスの関連分野として発展してきた経緯がある。その証拠にインフラマソームの研究者にはアポトーシス研究から移った人達が多い。また,カスパーゼ-1という呼び方はアポトーシス研究に由来する言葉である。本解説ではあえてインターロイキン変換酵素という古い呼び方も用いた。その趣旨は免疫や医学関係の研究者に対して話題提供ができたらとひそかに望むからである。
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