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インフラマソームとは,病原成分,アスベストなどの外来性因子,尿酸結晶などの内在性因子により活性化され,マクロファージなどの細胞質内で形成される蛋白質複合体である.形成されたインフラマソームは蛋白質分解酵素(カスパーゼ-1)を活性化し,炎症性サイトカインである活性型インターロイキン(IL)-1β,IL-18の産生分泌を通じて生体に強い炎症応答を惹起し,炎症性細胞死であるピロトーシスを誘導する.近年,インフラマソームによる炎症反応が,感染症,糖尿病,動脈硬化,自己免疫疾患,虚血性障害など,多彩な疾患の発症と進行にかかわっていることが明らかになっている.
細胞質受容体が外来性・内在性の危険シグナルを感知すると,細胞質受容体であるnucleotide-binding domain, leucine-rich repeat and pyrin domain containing(NLRP),カスパーゼ,apoptotic speck protein containing a caspase recruitment domain(ASC)などが集合してインフラマソームを形成する.本来,インフラマソームはマクロファージ内に進入した病原体の細菌性毒素などに反応して形成・活性化され,引き起こされた炎症やピロトーシスが感染防御に寄与し,宿主にとって有利に働く.しかし,尿酸結晶,アスベスト,シリカに対してインフラマソームが活性化すると,無菌性炎症が誘発され,痛風発作,アスベスト肺,珪肺症が引き起こされる.また血管内のコレステロール結晶に対してインフラマソームが反応すると,血管壁に慢性的な炎症を惹起し,血管内膜の肥厚と内腔の狭窄を通じて動脈硬化を引き起こす.このように,さまざまな炎症性疾患にインフラマソームが関与することが明らかになり,インフラマソームを阻害する治療薬の開発が期待されている1,2).
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