特集 妊産婦死亡の現状と削減に向けた対策
各論
産科危機的出血 弛緩出血
二井 理文
1
NII Masafumi
1
1三重大学医学部産科婦人科学教室
pp.355-360
発行日 2023年3月10日
Published Date 2023/3/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000815
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はじめに
通常,産後出血は,児の娩出後に子宮が収縮することで,胎盤剝離部の断裂血管および子宮静脈洞が閉鎖され,物理的に止血が得られる。しかし,子宮筋が良好な収縮をきたさない場合,胎盤剝離部の断裂血管,子宮静脈洞が閉鎖されなくなることで,大出血をきたすものを弛緩出血という1)。常位胎盤早期剝離,子宮型羊水塞栓症では,フィブリノゲンの枯渇により,凝固能が著しく低下する消費性凝固障害から産科DIC(播種性血管内凝固症候群)にいたるのに対して,弛緩出血では,直接産科DICを惹起することはないが,大量の赤血球濃厚液,輸液による希釈性凝固障害から,さらなる出血量の増加を招き,産科危機的出血から産科DICを併発する。
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