特集 薬にまつわる疑問に答える
薬にまつわる疑問
10.高齢者への処方
高齢者の多剤併用の現状とその問題点を教えてください
一杉 俊輔
1
,
川久保 孝
1
Shunsuke Hitosugi
1
,
Takashi Kawakubo
1
1東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部
キーワード:
高齢者
,
多剤併用
,
ポリファーマシー
,
処方カスケード
Keyword:
高齢者
,
多剤併用
,
ポリファーマシー
,
処方カスケード
pp.1113-1116
発行日 2022年9月1日
Published Date 2022/9/1
DOI https://doi.org/10.24479/ohns.0000000283
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はじめに
わが国の急速に進んでいる高齢化は,国民医療費の増加の一因であり,社会問題となっている。このほかにも,近年では “ポリファーマシー” という言葉が浸透してきているように,高齢者の多剤併用が問題視されている。高齢者は,一般成人と比較して,加齢による薬物に対する代謝・排泄機能の低下から薬物の最高血中濃度の増加および体内からの消失遅延が起き,薬物有害事象が発現しやすい特徴がある。そして併用薬がある場合は,シトクロムP450(CYP)といった薬物代謝酵素などによる薬物相互作用がそのリスクを増大させるおそれがある。また,生活面においても,視覚・認知機能を含めた生活動作(ADL)の低下により,飲み間違いなどの服薬の問題が多くなる。このように高齢者の多剤併用は,さまざまなリスクが顕在化していると考えられており,厚生労働省はこの問題を解消するために薬物療法の適正化を目指している。
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