特集 薬にまつわる疑問に答える
薬にまつわる疑問
10.高齢者への処方
高齢者で特に慎重投与が必要な薬剤はどんなものですか?
栗原 竜也
1
,
川添 和義
1
Tatsuya Kurihara
1
,
Kazuyoshi Kawazoe
1
1昭和大学薬学部臨床薬学講座天然医薬治療学部門
キーワード:
高齢者
,
薬剤起因性老年症候群
,
不適切処方
Keyword:
高齢者
,
薬剤起因性老年症候群
,
不適切処方
pp.1108-1112
発行日 2022年9月1日
Published Date 2022/9/1
DOI https://doi.org/10.24479/ohns.0000000282
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はじめに
高齢者では加齢に伴う生理的な変化により,薬物動態や薬物への反応性が一般成人とは異なる。また,慢性疾患を主体とした複数の併存疾患に対してそれぞれ治療薬を投与することで,薬物間相互作用を生じやすく薬物有害事象の発現率が高くなる。実際に,70歳以上の高齢者では,60歳未満に比べて薬物有害事象の出現率は1.5~2倍高く,入院患者の6~15%以上に何らかの薬物有害事象がみられることが報告されている1~3)。その他にも,アメリカの医療介護福祉施設での調査では,外来患者においても年間10%以上の薬物有害事象が出現することが報告されている2)。また,高齢入院患者の3~6%が薬剤起因性であることや4),薬物有害事象が背景にある入院では,長期入院の要因となることも報告されている5)。高齢者の薬物有害事象は,重症例の多いことが特徴であり,出現する領域も精神神経系や循環器系,血液系などの多臓器に渡り1),ほとんどの薬物有害事象が若年者に比べて起こりやすいと考えられている。さらに,薬物間相互作用に関する報告としては,348の介護老人保健施設を対象とした調査において,入所者の約3%に潜在的な薬物相互作用のリスクがあることが報告されている6)。
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