Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(angiotensin receptor neprilysin inhibitor:ARNI)は,心血管系の治療において新たな薬剤クラスであり,レニン-アンジオテンシン系(renin-angiotensin system:RAS)とナトリウム利尿ペプチド(natriuretic polypeptide:NP)系という,心血管系の主要な調節機構の両方に作用する。従来,複数の作用機序をもつ薬剤は,異なる薬剤を組み合わせた配合薬であることが一般的であったが,ARNIは,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(angiotensin Ⅱ receptor blocker:ARB)とネプリライシン阻害薬(neprilysin inhibitor:NEPI)を1:1で化学的に結合させた単一の分子構造をもつ点が特徴である。ARBであるバルサルタン(valsartan)とNEPIであるサクビトリル(sacubitril)を化合した薬剤であるサクビトリルバルサルタンは,心不全患者,特に駆出率が低下した患者に対する臨床試験で有効性が示され,第一選択薬として位置づけられている。また,サクビトリルバルサルタンは,従来のRAS阻害薬よりも優れた降圧効果をもつことがエビデンスとして示されている。一方で,ARBは高血圧治療において広く使用されており,これまでの多くの研究から,降圧効果や脳,心臓,腎臓の血管疾患に対する有用性が確立されている。しかし,ARNIを高血圧治療に応用する際には,ARBの作用に加えて,NEP阻害という新たな作用機序がもたらす効果を十分に理解したうえで使用する必要がある。

© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.