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特集 「糸球体上皮細胞学」の最新知見
総論
糸球体上皮細胞傷害の病理所見とその解釈
Pathological findings and interpretation of podcyte injury
三井 亜希子
1
,
清水 章
2
MII Akiko
1
,
SHIMIZU Akira
2
1日本医科大学内分泌代謝・腎臓内科学
2日本医科大学解析人体病理学
キーワード:
ポドサイト
,
ボウマン囊上皮細胞
,
ポドサイトパチー
Keyword:
ポドサイト
,
ボウマン囊上皮細胞
,
ポドサイトパチー
pp.299-305
発行日 2025年3月25日
Published Date 2025/3/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000001799
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はじめに
糸球体濾過障壁は,糸球体上皮細胞(ポドサイト),糸球体基底膜(glomerular basement membrane:GBM),糸球体内皮細胞の3層から構成され,腎臓の血液濾過機能の中心的役割を担っている。なかでもポドサイトは,濾過障壁の維持に不可欠であるだけでなく,係蹄基底膜の主要な産生細胞として機能し,糸球体内皮細胞の恒常性維持にも深く関与している。ポドサイトは,遺伝子異常,感染症,薬剤の影響による一次性の障害や,ネフロン数の減少に伴う残存糸球体への過負荷(メカニカルストレス)による二次性の障害など,多様な要因によって障害を受ける。ポドサイト障害に共通する形態変化として,糸球体硬化が挙げられ,蛋白尿の出現から腎機能の低下へと進行する。ポドサイトは増殖能力をもたない終末分化細胞であるため,一度損傷や脱落が起こると再生が困難であり,広範なポドサイト障害は不可逆的な糸球体障害につながる。また,ボウマン囊の壁側上皮細胞(parietal epithelial cell:PEC)は,ボウマン囊の内側を覆う上皮細胞であり,糸球体の発生過程においては,ポドサイトと連続してS字管を形成することが示されている。このことから,PECはポドサイトと起源を共有すると考えられ,ポドサイト障害後の修復や幹細胞様の機能を担う役割も注目されている。

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