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特集 多臓器不全と急性腎障害(AKI)
【総論】
AKIに伴う臓器障害のメカニズム 好中球細胞外トラップ・免疫学的血栓形成とAKI
The pathophysiology of acute kidney injury due to neutrophil extracellular traps causing immunothrombosis
増田 治史
1
MASUDA Haruchika
1
1東海大学医学部 基礎医学系生体構造機能学
キーワード:
NETs
,
immunothrombosis
,
acute kidney injury
Keyword:
NETs
,
immunothrombosis
,
acute kidney injury
pp.13-17
発行日 2022年7月25日
Published Date 2022/7/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000000223
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はじめに
生体は微生物または損傷した組織や細胞の排除・拡散予防システムとして自然免疫系を備えている。このような異物排除のため,好中球・単球が活性化し,炎症が引き起こされる。好中球は細胞質顆粒内のプロテアーゼとともにヒストンDNAを細胞外に放出し〔好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps:NETs)〕,異物の除去と拡散予防のため血栓形成を促す。NETsが重要な役割を担う自然免疫系機構は免疫学的血栓形成(immunothrombosis)といわれる。一方,NETsによる細胞外ヒストンDNAは毒性を有し,組織や細胞を傷害し,炎症性疾患の引き金にもなる。すなわち,NETsは生体恒常性維持に必須である反面,炎症の引き金にもなり,諸刃の剣となる。事実,感染症,敗血症にとどまらず,非感染性炎症性疾患の病態形成に重要な役割を担うことが明らかになっている。近年,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の合併症に多臓器不全,急性腎障害(AKI)が報告され,その病態に免疫学的血栓形成が関与することが注目されている。
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