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はじめに
肺と腎臓は解剖学的に離れた場所に存在し,その機能も全く異なる。しかしながら,どちらの臓器も,重症患者において傷害を受ける頻度が高い臓器として知られている。興味深いことに,急性腎障害(acute kidney injury:AKI)の患者は急性呼吸不全(acute respiratory failure:ARF)をきたす確率が高く,一方で急性肺障害〔Berlin Definition以降,臨床上acute respiratory distress syndrome(ARDS)の語が使用されることになったことから,以下ARDSとする〕の患者では,高率にAKIが発生する1)。この理由はいくつか考えられるが,第一に1つの病態,例えば敗血症などがAKIとARDS/ARFを引き起こす共通の原因になりうることが挙げられる。肺は外界と接しており,さまざまな病原体などに曝露されるため,侵襲によって引き起こされるアラートに対する感受性が高く,強い炎症が引き起こされやすい。他方の腎臓は炎症に加えて,侵襲によって引き起こされる血圧低下といった血行動態の変化に対して脆弱である。これらの理由から,この2つの臓器は重症患者において真っ先に傷害を受ける。一方で,腎臓と肺の間の相互作用を介して,AKIがARDS/ARFの原因や増悪因子となったり,あるいは逆にARDS/ARFがAKIを引き起こしたりするメカニズムも存在していると考えられている1)。臨床データから腎臓と肺の間の直接的な相互作用を明確に示すことは難しいが,数多くの動物実験が,AKIがARDS/ARFを引き起こす,あるいはARDS/ARFがAKIを引き起こす相互作用のメカニズムを明らかにしてきている。
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