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Ⅰ MGRSの病態
Monoclonal gammopathy of undetermined significance(MGUS),多発性骨髄腫,原発性マクログロブリン血症には,さまざまな全身疾患が合併する1)。最も高頻度に認められるamyloid light-chain(AL)アミロイドーシスは,診断時の多発性骨髄腫患者の5%に合併するが,再発時も含めれば頻度はもっと高い。MGUSや骨髄腫患者の尿蛋白電気泳動所見で,通常の骨髄腫腎(円柱腎症:図1-a)の場合とは異なり,ベンス・ジョーンズ蛋白は微量でアルブミン尿が主体である場合(図1-b)には,皮下脂肪織・骨髄・胃粘膜・口唇などの生検を実施し,コンゴーレッド染色でアミロイド蛋白の有無を精査する必要がある。ただし,MGUS患者に合併するアミロイド沈着がすべてM蛋白とは限らないので,免疫染色や高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)で確定する必要がある。ALアミロイドーシスを認める患者にはM蛋白を最大限減少させうる治療選択が必要であるが,心・腸管・肝など重要臓器への沈着を認める場合には突然死のリスクも高く,十分な注意が必要となる。次に遭遇することが多いM蛋白沈着症は,単クローン性免疫グロブリン沈着病(monoclonal immunoglobulin deposit disease:MIDD)である。コンゴーレッド染色には染まらず,κ型軽鎖沈着を認めることが多い。本疾患では沈着の主要臓器は腎臓であり,アルブミン尿主体の蛋白尿を認め(図1-c),アミロイド蛋白が証明できない場合に,腎生検を実施してMIDDの診断を行う。もちろん糖尿病性腎症や高血圧性腎硬化症の鑑別が必要であることはいうまでもない。また,主に過剰産生されたκ鎖(Vκ1)が近位尿細管で吸収される際に尿細管細胞内のライソゾームによる分解に抵抗して蓄積するlight chain proximal tubulopathy(LCPT)などの病態もあり,ときにFanconi症候群を呈することもある。このようにMGUS患者において,M蛋白が腎毒素(nephrotoxin)として作用して腎機能障害を伴う病態をmonoclonal gammopathy of renal significance(MGRS)と呼び,糸球体や尿細管障害など多様な病態を含んでいる(図2)2~4)。またM蛋白が補体制御蛋白,とりわけcomplement factor Hやstabilizer C3 convertaseに対する自己抗体活性を有し,補体の活性化を引き起こして腎障害を呈するC3 glomerulopathy(C3GN)やthrombotic microangiopathy(TMA),形質細胞腫瘍がvascular endothelial growth factor(VEGF)の産生亢進を介して病態を形成するクロウ・深瀬(POEMS)症候群などのM蛋白沈着を伴わないMGRSも経験される。
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