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特集 消化器内視鏡寸言集2025
Ⅲ.胃・十二指腸
泥沼除菌は自己免疫性胃炎(A型胃炎)の可能性を考慮すべし
Autoimmune gastritis should be suspected when H. pylori eradication repeatedly fails
赤松 泰次
1
,
市川 徹郎
2
Taiji Akamatsu
1
1長野県立信州医療センター内視鏡センター
2長野県立信州医療センター病理・臨床検査科
pp.534-535
発行日 2025年4月25日
Published Date 2025/4/25
DOI https://doi.org/10.24479/endo.0000001998
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解説
Helicobacter pylori(H. pylori)の除菌治療効果判定は一般に,尿素呼気試験(urea breath test:UBT)で行われている。この試験の原理は図1に示すように,H. pyloriがもつウレアーゼ活性により間接的にH. pyloriの有無を評価している。H. pyloriは強いウレアーゼ活性を有することが特徴で,胃内に微量に分泌される尿素を分解してアンモニアを発生させて周囲の酸を中和することにより,強い酸の環境下でも生育が可能になったと考えられている。しかし,H. pylori以外にも弱いウレアーゼ活性をもつ雑菌が存在し,胃底腺が萎縮して酸分泌能が低下した自己免疫性胃炎(autoimmune gastritis:AIG)では,そのような雑菌が胃内で生育可能になる。そのためH. pyloriが存在しなくてもUBTの判定が偽陽性を示し,いわゆる「泥沼除菌」という不必要な除菌治療を繰り返す結果となる1〜3)。同様の現象は,proton pomp inhibitor(PPI)やボノプラザンを服用した状態でUBTを行った症例,胃癌リスク分類のD群のような極端に胃粘膜全体が萎縮した患者,および壁細胞機能不全症の症例でも起こりうる。すなわち,低酸状態の症例においては,UBTは疑陽性を示す可能性があることを認識しておく必要がある。これに対して,抗菌薬を服用した状態でUBTを行うと,その影響によりH. pyloriのウレアーゼ活性が低下し,H. pyloriが存在しても偽陰性となる場合がある。
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