特集 食道胃接合部の新展開
食道胃接合部領域の炎症と化生 食道胃接合部領域の病理 炎症やBarrett化でどう変わる?
相田 順子
1
,
新井 冨生
,
石渡 俊行
1東京都健康長寿医療センター研究所 老年病理学研究チーム
キーワード:
Barrett食道
,
胃食道逆流
,
胃粘膜
,
静脈
,
食道胃静脈瘤
,
食道胃接合部
,
食道腫瘍
,
腺癌
,
発癌
,
食道粘膜
Keyword:
Barrett Esophagus
,
Veins
,
Esophageal and Gastric Varices
,
Esophagogastric Junction
,
Gastric Mucosa
,
Esophageal Mucosa
,
Gastroesophageal Reflux
,
Adenocarcinoma
,
Esophageal Neoplasms
,
Carcinogenesis
pp.690-696
発行日 2020年5月25日
Published Date 2020/5/25
DOI https://doi.org/10.24479/J02312.2020385451
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食道胃接合部は、機械的刺激に強いとされる重層扁平上皮に被覆された食道と、化学的刺激に強い円柱上皮に被覆された胃との境界である。食道粘膜の保護と化学的刺激のバランスが崩れた状態が食道胃逆流症(GERD)であり、あるいはそれに引き続いて生じるBarrett食道であると考えられる。本稿では食道胃接合部の最近の知見について報告するとともに同部位に生じる病理組織学的変化について概説する。GERDにおいては、胃酸・胆汁酸の逆流により食道に炎症をきたし、その反応として円柱上皮化が生じる。その際、胃酸と胆汁酸の混合割合も影響を与えるといわれている。潰瘍やびらん、炎症は粘膜固有層にも変化をきたし、線維化や粘膜筋板の二重化などを生じることがある。つまりBarrett食道においては、円柱上皮化生のような上皮の変化だけではなく、粘膜筋板や食道腺にも変化が生じる。一方、これらの変化と異なり、病態の有無に関連なく存在する食道固有の組織学的マーカーとして柵状血管が知られている。この柵状血管を診断的に意義のある所見として用いるために新たに検討を加えた。その結果、食道胃接合部領域の粘膜内に存在する短径100μm以上あるいは長径1,000μm以上の静脈は内視鏡的柵状血管に相当し、食道固有の組織と判定することが可能となった。
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