特集 新しい医療を拓くメカノバイオロジー
8.筋力トレーニングによる筋肥大とmTORC1シグナル
中里浩一
1
,
小笠原理紀
2
,
石井直方
3
1日本体育大学体育学部健康学科運動生理学研究室・教授
2名古屋工業大学大学院工学研究科生命・応用化学専攻・准教授
3東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻健康スポーツ科学分野・教授
pp.1467-1475
発行日 2017年6月1日
Published Date 2017/6/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201706095
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筋力トレーニングによって骨格筋量は変化するが,その変化には筋タンパク質代謝が深く関与する。mTORC1(mechanistic target of rapamycin complex 1)シグナルは,タンパク質翻訳効率を高め容量を増大させることで,筋タンパク質合成を活性化する。mTORC1は主に成長因子などからのシグナルと,アミノ酸からのシグナルの制御を受ける。筋収縮などのメカニカルな刺激は,ホスファチジルリン酸やnNOS(一酸化窒素合成酵素)を介してmTORC1シグナル活性を高める。注意すべき点は,これらの応答はラパマイシン感受性mTORC1シグナルを中心に検討された結果ということである。免荷による筋萎縮や通常時における筋量維持では,ラパマイシン非感受性mTORC1シグナルの寄与が大きい可能性がある。過負荷時の応答も含めて,メカニカルな刺激に対するmTORシグナルの総合的な解析が今後の重要な課題に位置付けられる。