特集 大腸内分泌細胞腫瘍─WHOの考え方と日本の考え方
序 説
岩下 明德
1
1福岡大学筑紫病院病理部
pp.5-6
発行日 2019年1月20日
Published Date 2019/1/20
DOI https://doi.org/10.19020/INT.0000000291
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
消化管の内分泌細胞腫瘍(endocrine cell neoplasm)は,日本では従来からカルチノイド腫瘍(carcinoid tumor;CT)と内分泌細胞癌(endocrinecell carcinoma;ECC)に大別されてきたが,2010 年に発表されたWHO 分類では神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor;NET)と神経内分泌細胞癌(neuroendocrine carcinoma;NEC)に大別し,前者を核分裂数とKi-67 指数のみからNET G1(これのみカルチノイドと呼ぶ)とNETG2 に亜分類している. 本邦では,カルチノイド腫瘍は原腸系臓器に広く分布するアミン・ペプタイド産生内分泌細胞の幼若細胞に起源する腫瘍,つまり内分泌細胞のみから構成され特異な組織像を示す上皮性腫瘍で,悪性度の低い一種の癌腫と位置づけられている.肉眼的に黄色調の粘膜下腫瘍として認識される.組織学的には比較的小型で均一な腫瘍細胞が小胞巣状,索状,リボン状,ロゼット状ないし管状に増殖し,間質は狭く毛細血管に富む特徴的な形態をとる.核分裂像はほとんどみられず,増殖能指数(Ki-67 指数)も低値である.組織化学的,免疫組織化学的,および電顕的にはほとんどすべての腫瘍細胞が神経内分泌顆粒(物質)を有している.予後は比較的良好な場合が多い.
Copyright © 2019, Nihon Medical Center, Inc. All rights reserved.