特集 炎症性腸疾患の分子標的治療を総括する
序 説:炎症性腸疾患に対する分子標的治療
長沼 誠
1
1関西医科大学内科学第三講座
pp.243-244
発行日 2021年9月20日
Published Date 2021/9/20
DOI https://doi.org/10.19020/INT.0000000611
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炎症性腸疾患(IBD)の基本的な治療薬は5-アミノサリチル酸製剤とステロイド,クローン病ではそれに加えて栄養療法があるが,近年多くの生物学的製剤や低分子化合物が開発され,実臨床で使用することが可能になっている.その「先駆け」というべき製剤が抗tumor necrosis factor(TNF)-α抗体製剤であり,2002年にインフリキシマブがクローン病に使用されるようになってから,治療の基本的戦略が大きく進歩を遂げている.抗TNF-α抗体製剤の登場により,それまでの治療に比べて速やかな治療効果が得られ,症状だけではなく内視鏡的にも早期に改善が得られるようになった.この速やか,かつ確実な治療効果によりmucosal healing,deep remissionといった,抗TNF-α抗体製剤が登場する前には存在しなかった用語が使われるようになり,現在では内視鏡的な改善・治癒が治療目標として掲げられるようになっている.その後TNF-αを含めたIBDの病態に関連した多くの分子を標的とした治療法の開発が急速に進んでおり,腸管粘膜の炎症を惹起・持続させるサイトカインやシグナル伝達を阻害する薬剤や,腸管血管内皮細胞に接着する分子をターゲットとした治療薬などが実用化されている.
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