Japanese
English
特集 手の運動の制御と学習
序
Introduction
酒田 英夫
1
Hideo SAKATA
1
1日本大学医学部第一生理学教室
11st Department of Physiology, Nihon University School of Medicine
pp.5-6
発行日 1998年2月10日
Published Date 1998/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431900817
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- Abstract 文献概要
手の操作運動は直立二足歩行と言語と並んで人間を特徴づける機能である。人間とは何かという問に対してBenjamin Franklinは「人間は道具を作る動物である」と答え,Henri Bergsonはhomo faber(道具を作る人)と定義した。物を把握する手は霊長類の共通の祖先であるメガネザル(Tarsius)から既にそなわっている。しかし拇指と示指を正しく対向させる高度の精密把握は旧世界ザルや類人猿にしか見られない。チンパンジーやゴリラは個々の指を独立に動かしてかなり器用に手を使い,白アリ釣りやヤシの実割りに見られるように木の枝や石を道具として使用することができる。しかし手を歩行に使うknuckle walkingのため拇指が短く,力が弱いから本当に道具らしい道具を作ることはできない。もっとも早く道具を作ったのはもっとも古いヒト科の祖先であるhomo habilis(手先の器用なヒト)であろう(約200万年前)。アフリカのオルドヴァイ渓谷で原始的な石器と共に発掘されたhomohabilisの拇指骨には現代人と同じように類人猿にはない三つの拇指筋がついていた痕跡が見られた。
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