特集 十二指腸上皮性非乳頭部腫瘍の診療を巡って―現状と課題
2 .十二指腸上皮性非乳頭部腫瘍の臨床病理と分子生物学を巡って(3)十二指腸癌の分子生物学的背景―何がどこまでわかっているのか?
小島 洋平
1
,
鈴木 裕
1
,
阪本 良弘
1
,
正木 忠彦
1
,
森 俊幸
1
,
阿部 展次
1
1杏林大学医学部外科
キーワード:
原発性十二指腸腺腫
,
腺癌
Keyword:
原発性十二指腸腺腫
,
腺癌
pp.1231-1238
発行日 2018年8月20日
Published Date 2018/8/20
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000000496
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原発性非乳頭部十二指腸癌はまれな疾患であり,発癌機序は未だ明らかでない.遺伝子変異の特徴としてERBB2,GNASなどの変異やERBB/HER signaling pathwayや,Wnt signaling pathwayの存在が指摘されている.しかし,十二指腸腫瘍には亜型の存在や,解剖学的部位により細菌叢や胆汁刺激なども異なるといった,複雑な要因もあり,それぞれで発癌機序が異なるともいわれている.大腸癌同様に,十二指腸腺腫/腺癌にもadenoma—carcinoma sequenceが成り立つかどうかも明らかでない.当教室では,WHO分類に従い腺管構造別に組織をサンプリングした.それぞれの腺腫,腺癌の遺伝子変異を解析したところ,KRAS変異は低度異型腺腫に対し,高度異型腺腫および腺癌に多く,TP53変異は低度異型腺腫,高度異型腺腫に比べ腺癌に頻度が高い傾向があった.また,明らかな変異の蓄積を示す例は少数であり,adenoma—carcinoma sequenceの関与は十二指腸癌では限定的であると考えられた.一方でAPC変異が腺癌で少なく腺腫で多かったことは大腸癌とは異なるパターンであり,十二指腸癌の進展にはde novo発癌など,他の発癌様式も重要である可能性が考えられた.また,APCのT1556fs変異およびSTK11の変異頻度が高く,これらの遺伝子変異が十二指腸腫瘍の発生に重要な役割を果たしていると考えられた.
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