透析患者の消化管疾患AtoZ 各論
7.腹腔・腹壁 2 腹膜播種・癌性腹膜炎
小峯 弓子
1
,
吉田 俊太郎
1
,
藤城 光弘
1
,
小池 和彦
2
1東京大学医学部附属病院消化器内科
2関東中央病院
キーワード:
胃癌
,
卵巣癌
,
腹膜播種
,
癌性腹膜炎
,
血液腹膜関門
Keyword:
胃癌
,
卵巣癌
,
腹膜播種
,
癌性腹膜炎
,
血液腹膜関門
pp.1064-1066
発行日 2021年8月25日
Published Date 2021/8/25
DOI https://doi.org/10.19020/CD.0000001869
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腹膜播種が転移として多い癌に消化器癌や婦人科癌がある.消化器癌ではとくに胃癌,婦人科癌では卵巣癌の頻度が高い.卵巣癌は初期には症状に乏しく,40%以上の症例で進行した状態で診断される.胃癌では検診内視鏡検査の普及により早期の段階で診断される症例が増えている一方,すでに遠隔転移を伴った状態で診断される症例は40%程度いる.腹膜播種を伴った状態,いわゆる癌性腹膜炎と診断された場合には,肝転移など他部位の転移と比較して,その予後は非常に不良であることが知られている.血液腹膜関門がバリアとなり,経静脈投与された抗癌剤が腹腔内の播種結節に十分に到達せず,治療効果が得られにくいためである.また,癌性腹膜炎は小腸や大腸などの消化管や胆道に通過障害をきたし,腸閉塞や閉塞性黄疸を生じる.その際,外科的あるいは内視鏡的ドレナージ治療が必要となる.さらに多発狭窄を生じた場合には,ドレナージ治療が無効なことも多く,麻薬性鎮痛薬などで症状緩和を図る必要も生じるため,さまざまな科の連携が必要である.
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