投稿論文 紹介
呉秀三はなぜ「乳巖治験録」を改竄し、その合成写真を作ったのか
松木 明知
1
1弘前大学 大学院医学研究科麻酔科学教室
キーワード:
医学書誌
,
乳房腫瘍
,
肖像画
,
伝記
,
文献学
,
江戸期医学史
,
呉秀三
,
華岡青洲
Keyword:
Bibliography of Medicine
,
Philology
,
Portraits as Topic
,
Breast Neoplasms
,
Biographies as Topic
pp.871-883
発行日 2022年8月10日
Published Date 2022/8/10
DOI https://doi.org/10.18916/J01397.2022250887
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1923年の呉秀三の「華岡青洲先生及其外科」は現在でも高く評価されている。呉はこの中で「乳巖治験録」を改竄して復刻し、あまつさえその写真も合成して示した。そして、青洲にとって否定的と考えられる事実にいっさい言及しなかった。呉がなぜこのような作為を行ったかは不明であった。しかし、第一次世界大戦後の不況によって経済的に困窮した曾孫華岡貞次郎が、青洲の供養・鎮魂のために本書の執筆を呉に懇請した以外に理由は考えられない。供養・鎮魂の書であるから青洲の名誉を損なうことはいっさい書けないのである。
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