特集 産婦人科医が知っておくべき新生児マススクリーニング
各論
3.脂肪酸代謝異常症
小林 弘典
1
H. Kobayashi
1
1島根大学医学部附属病院検査部
pp.683-687
発行日 2024年7月1日
Published Date 2024/7/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000003012
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脂肪酸代謝異常症(FAODs)は,2014年からタンデムマス法の導入とともに新生児マススクリーニング(NBS)対象に追加され,現在,NBS対象25疾患のうち7疾患が含まれている(二次対象疾患含む)。FAODsは脂肪酸の代謝経路に関与する酵素や蛋白質の先天的な異常をきたし,臨床像は類似する点も多い。典型例では平時には無症状であるにもかかわらず,哺乳間隔が開いたり,感染症への罹患を契機としてエネルギー代謝障害が起こり,結果として著しい低血糖や肝障害,筋障害をきたし,乳幼児突然死の原因になることもある。治療には急性発作を防ぐための食事・生活指導が中心となる。NBSにおいては見逃し例の低減を目的として,再検査を経ずに即精密検査を行うことが推奨されている。一方で,採血時点での児の哺乳不良などに起因する偽陽性も少なくない。精密検査の際には,出生から採血後までの哺乳状況や体重の推移が鑑別にも重要な情報となる。保護者に対して精密検査の説明を行う際には,FAODsでは精密検査の意味するところが他疾患とは異なる場合が少なくないことを踏まえて,過度な不安を与えないよう配慮しつつも,速やかな受診の必要性と,受診までは3時間以内の哺乳間隔を遵守することを伝える必要がある。
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