特集 いま大きく変わりつつある子宮頸がんの診療
14.動き続けるアメリカと子宮頸がん診療
松尾 高司
1
K. Matsuo
1
1南カリフォルニア大学産婦人科
pp.641-646
発行日 2022年6月1日
Published Date 2022/6/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000002179
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アメリカの子宮頸がんを取り巻く環境は常にダイナミックに変化し,動き続けている。新規がん症例は毎年のように減り続け,子宮頸がんはアメリカではもはや希少がんの範疇だ。子宮頸がんワクチン接種率は年々増加し,そして子宮頸がん検診にHPVテストが組み込まれた。一方で初期がんの減少,放射線治療の組み入れ,そしてQOLの観点による縮小手術への移行に伴い,広汎性子宮全摘手術からは確実に足が遠のきつつある。またLACC試験の影響でほぼすべての広汎手術症例が腹腔鏡から開腹へと戻った。QOLの観点の重要性はますます増し,骨盤リンパ節郭清はセンチネルリンパ節生検に取って代わられつつある。再発・転移がんに対してもこの十数年で標準治療が劇的に変わった。2009年の2剤から2014年の3剤へ,そして2021には場合によっては4剤の多剤併用療法だ。子宮頸がんの日常診療にバイオマーカーという言葉が使われるようなり,そして初の薬剤・抗体複合体が使用認可を受け,今後もさらに第二・第三世代免疫療法の波が押し寄せるだろう。そうした速く激しく打ち寄せる波の一方で子宮頸がん診療の社会格差・不均衡問題も水面下で大きな渦を巻いており,変化し続ける子宮頸がん治療をより複雑なものにしている。本稿では,アメリカの子宮頸がん診療の近年の動向を俯瞰する。
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