連載 ほんとの出会い・29
動いている国 アメリカ
岡田 真紀
pp.696
発行日 2008年8月15日
Published Date 2008/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101144
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11月にはアメリカ大統領選挙がある。共和党は早々とマケイン候補に一本化されたが,民主党ではヒラリー・クリントン候補とバラク・オバマ候補が長くタフな闘いを繰り広げた。読者の皆さんはどちらを応援なさっただろうか。私の周りでは,女性ということでヒラリー候補に肩入れした人が多かった。投票権もないのに,「私だったら」と幻の投票をしてみたくなる今年の民主党候補者争いだった。
私がアメリカで黒人の貧しいコミュニティーで暮らしたのは,30年前のこと。民主党のカーター対共和党のレーガンの闘いだった。テレビでは連日選挙戦の模様を放映している。ところが,私の周りは静かなもの。黒人の友人に,「選挙に行かないの?」と聞いても,「カーターだってレーガンだって,毎日パーティーでおいしいものを食べてる金持ちだ。私たちのことなんかわかりゃしないよ」と選挙に関心を示さない。キング牧師の「私には夢がある」という名演説,ワシントン大行進による非暴力の公民権運動,理想に向かって現実を変えていく黒人の力に惹かれてアメリカに渡ったけれど,ごくごく身近な現実は,政治より日常を生きていくのに精一杯だった。
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