世界の波
誰がためにアメリカは動く
末松 満
pp.26-27
発行日 1953年1月10日
Published Date 1953/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200433
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季節の魚は秋のサンマから冬のサバに変つたはずだが,今シーズンは不漁というのか,サバの姿がめつきり少くなつてはいないだろうか.例年11月の声がかかれば,千葉県,静岡県の漁船まで遠く朝鮮海峽のサバ漁に出動し,総勢300隻を超え,これに大刀魚をとるトロール船鯛類をめざす底曳網船をまじえて賑やかな大漁節もきこえようというのに,今年は国連軍の設定した「防衞水域」と,韓国政府の「李承晩ライン取締強行」の2件に挾み打たれて出漁の自由を奪われ,3万数千の漁民は生計の途をふさがれ,漁獲高22万トン金額にして75億円というものは,場合によつてはそつくりそのまま韓国側へさらわれてしまう恐れさえある.
事のおこりは李承晩大統領が1952年1月「朝鮮半島を取り巻く海は,島根県竹島,長崎県対馬,同県五島列島あたりまで韓国のものであるぞよ」と宣言したことに始まる.国際法の原則に照してみても,海というものは海岸から3海里(5キロ半)までがその国の領海であり,それより先きは公海といつて誰が何をしようと勝手なはずだ.李承晩大統領が張りめぐらせた海の繩ばり(いわゆる李承晩ライン)なんぞに従う必要なしと考え,わが漁船は相変らず朝鮮沖の公海で活躍をつづけていたのだが……9月末国際連合軍司令部は突如「防衞水域」というものを朝鮮半島の周辺に作り,共産軍側のスパイ密輸者が小舟にひそんで往来するのを取締ることになつた.
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