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どっくんどっくん,どくどく.心臓の声が聞こえる.ふと右手で左橈骨動脈を触れてみた(脈診).脈の乱れがあった.途中に弱い脈が入り,はっきりとした脈拍数が捉えきれない.不整脈を自ら体験した.心臓は一般的に1日に平均100,000回動いている.71年間,雨の日も風の日も休むことなく,そのように動いていた私の心臓.考えてみるとすごい.動きのリズムがちょっとくらいおかしくても不思議ではない.専門医の門をくぐり,24時間Holter心電図検査を受けた.寝ているときの脈は正常だが,起きているときは常に二段脈の不整脈が出ていた.診断名は上室性期外収縮であった.加齢によるものである.
さて,なぜ心臓は休むことなく動き続けることができるのであろうか? 不思議だ.同じ横紋筋である骨格筋と心筋の形態の差を電子顕微鏡で迫ってみた.筋原線維を構成する明帯(アクチンフィラメントのみからなる)と暗帯(アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが交互に配列している)の微細構造は,両者とも全く同じであり([1],[2]),Z帯の位置に横細管がある([2]).さらに,カルシウムを貯蔵している筋小胞体が網状をなして,筋原線維を包囲していることは共通の特徴である([3],[4]).しかしながら,筋原線維と筋原線維の間の筋形質に両者の大きな差異がみられる.[1]の骨格筋線維をみると,Z帯を挟んで小型で類円形のミトコンドリアが列をなしてリボン状に配列している.一方,[2]の心筋線維では,筋原線維間に配列するミトコンドリアはかなり大型で,筋節(Z帯からZ帯まで)の長さに匹敵している.拡大像で,ミトコンドリアのクリスタは極めて発達している([3],[4]).凍結割断した心筋組織を走査電子顕微鏡でみると,筋小胞体やミトコンドリアが立体的にみえる([4]).
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