特集 ワクチンの安全性と社会学—HPVワクチンの接種はなぜ広まらないのか?—
Ⅰ.感染性疾患とワクチンにまつわる諸問題
1.ワクチンと反科学主義
-—日本固有の病理について—
岩田 健太郎
1
K. Iwata
1
1神戸大学都市安全研究センター感染症リスクコミュニケーション分野/大学院医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野
pp.249-253
発行日 2021年3月1日
Published Date 2021/3/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000001653
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反ワクチンの歴史はワクチンの歴史とほぼ同じ長さだけある。ワクチンは衛生的理由から,宗教的理由から,政治的理由から,あるいは科学的見解の誤解釈から非難されてきた。しかし,科学的な検証と理性的な対応によってそういうムーブメントはその都度克服され,反ワクチン主義(anti-vaxxers)はマイナーなアウトライアーなままであった。この世界的な趨勢に合致しないのが日本である。日本では反ワクチン主義がなぜかメジャーなメディアに伝播し,そして政治家,官僚にまで影響し,国の政策にそのまま反映されてしまう。科学や理性よりも情緒や空気や皆の納得が優先される同調圧力が強い国の独特な現象だ。なぜ,このようなエートスが生じたのか。そしてどうすればそれを克服できるのか,本稿で論じてみたい。
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