Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
漱石の反適応主義―成功者は適応主義者か?
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.894
発行日 1998年9月10日
Published Date 1998/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108762
- 有料閲覧
- 文献概要
漱石の作品では,世俗的な適応をよしとしない反適応主義的な考え方が繰り返し描かれていて,それが,世間への不適応に悩む読者の共感を得る一因ともなっている.
例えば,明治39年に発表された『坊っちゃん』には,「世間の大部分の人は悪くなる事を奨励している様に思う.悪くならなければ社会に成功はしないものと信じているらしい」とあるように,主入公の反適応的な生き方が肯定的に描かれているし,『野分』(明治40年)にも「道也が追い出されたのは道也の人物が高いからである」,「彼が至る所に容れられぬのは,学問の本体に根拠地を構えての上の去就である」といった,主人公の教師白井道也の不適応を正当化するような文章がある.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.