特集 着床前診断—現状と近未来の方向性—
総論
1.着床前診断の意義と経緯
末岡 浩
1
K. Sueoka
1
1慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター
pp.797-802
発行日 2020年8月1日
Published Date 2020/8/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000001353
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生殖細胞が有する遺伝学的情報が,次世代の生命に伝わる際に発生する異常や疾患の発症に対して受精卵の段階から対峙するために開発されたのが着床前遺伝子診断である。その対象によって単一遺伝子病の遺伝子保因者,染色体構造異常保因者,染色体異数性を対象とするものをそれぞれPGT-M,PGT-SR,PGT-Aと呼称している。現在は,科学的検証を求めるための研究から診療への位置づけへのプロセスにあると理解できる。用いる技術は,生殖補助技術(ART)と遺伝子診断技術に大別される。全ゲノム増幅(WGA)が可能になったことから解析の方法も拡がりをみせ,マイクロアレイ法と次世代シーケンサー(NGS)による方法に大別される網羅的遺伝子解析法も導入された。なお,栄養外胚葉(TE)に多く生じているモザイクを代表とする胚自体の不安定性や,遺伝子増幅を中心とした技術的な限界などの課題がある。技術の進化とともに改善される方向に進むことは予測されるが,結果の開示の際にはこれらの課題を認識し,共有しておく必要がある。
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