症例
里吉病(全身こむら返り病)と診断された1女児例
倉橋 詔子
1
,
長井 恵
1
,
杉本 圭相
1
1近畿大学医学部小児科学教室
キーワード:
里吉病
,
繰り返す筋けいれん
,
筋けいれん
,
脱毛
,
下痢
Keyword:
里吉病
,
繰り返す筋けいれん
,
筋けいれん
,
脱毛
,
下痢
pp.948-952
発行日 2023年9月1日
Published Date 2023/9/1
DOI https://doi.org/10.18888/sh.0000002696
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里吉病とは,1963年に里吉が提唱した進行性の疼痛性筋けいれん,下痢,脱毛症を3主徴とする多臓器疾患である.吸収不良症候群に伴う栄養障害や脱水,筋けいれんによる呼吸不全などにより,重篤な障害や死に至ることもある1).わが国での報告数は70例未満と希少な疾患である.日本人女性に比較的多く,発症年齢は10歳前後が多いとされている2).1967~2018年に発表された里吉病は64例であり,うち47例(73%)が女性,28例(43%)が日本人であった.診断時年齢は5~65歳で中央値は16歳,平均は20.3±12.4歳であった.症状発現年齢は1~46歳で中央値は11歳,平均は13.02±9.1歳であり,成人発症はわずか13%であった3).原因は特定されていないが,自己抗体の存在や免疫抑制薬による症状緩和例があることから,自己免疫疾患が推定されている.MEDLINE,Web of Knowledge,Scopusでの検索では,全64例中47例で治療法の記載があり,使用された薬剤は筋弛緩薬/抗けいれん薬,副腎皮質ステロイド薬/免疫抑制剤の2つに大別される3).現時点では副腎皮質ステロイド薬が最も効果を認められており,使用された症例では死亡例はない.筋弛緩薬のなかで最も使用されたのはダントロレンナトリウム水和物(ダントリウム®)であり,15例中13例(87%)で筋症状を改善したが,他の臨床症状には効果を認めなかった3).
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