外傷性腕神経叢損傷の診断・治療戦略

Diagnosis and therapeutic strategies for traumatic brachial plexus injuries

要旨：外傷性腕神経叢損傷は交通事故，特にオートバイ事故を典型とした高エネルギー外傷で起こることが多く，有連続損傷，神経断裂に加え，修復不可能な神経根引き抜き損傷（節前損傷）が起こることが特徴である。したがって診断，治療戦略の要点は早期に損傷部位，損傷程度を的確に診断し，速やかに適切な治療を開始することにある。診断は，病歴，身体所見，画像所見，電気生理学的検査などから総合的に判断する。有連続損傷の可能性が高ければ保存療法を選択するが，引き抜き損傷や神経断裂が疑われれば，確定診断のため腕神経叢展開術，術中電気診断が早期に必要である。治療は，節後損傷であれば神経移植術など神経修復がありうるが，引き抜き損傷の場合，神経移行術が適応となる。損傷型により肋間神経移行術や，尺骨神経部分移行術などの適応を判断，機能再建を図る。