Complex elbow instabilityの概念

尺骨鉤状突起骨折を中心に単独骨折と合併する鉤状突起骨折以外の骨折・脱臼に伴う肘不安定症の概念いわゆるcomplex elbow instability の概念と治療原則を紹介した。一般に，腕尺関節脱臼例と脱臼を伴わない尺骨鉤状突起単独骨折例があり単独骨折例の予後は良好であるが，腕尺関節脱臼に加え，さらに橈骨頭骨折も合併するterrible triad は靱帯損傷の合併頻度が高く後方への外側または内側回旋不安定症を伴うため尺骨鉤状突起の再建も図るべきである。内側側副靱帯損傷の合併例は少ない。Terrible triad と内側型の尺骨鉤状突起骨折は解剖学的整復が得られた後でも肘関節拘縮や，長期には変形性肘関節症が残ることを念頭に置き，治療にあたるべきである。