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近年の内視鏡外科手術の発達に伴いさまざまな領域での腹腔鏡手術の有用性について,多くの報告がなされている。腹腔鏡を用いた腹膜内到達法による腹膜前鼠径ヘルニア修復術(transabdominal preperitoneal repair;TAPP)は腹腔鏡下に腹膜前腔を剥離して鼠径部にメッシュを留置・固定し,腹膜で被覆する術式である。TAPPでは術創の縮小化が可能であり腹壁破壊が少ないことから術後疼痛が緩和され,早期離床が可能となり術後在院期間が短縮することで早期の社会復帰が期待される。さらには整容性に優れている観点からも前方アプローチと比較して有用性が高いことが知られている1)。臓器の摘出を伴わない鼠径ヘルニア修復術ではさらなる創部の縮小化が可能であり,いわゆる減孔(数)式手術(reduced port surgery;RPS)の良い適応であると考えられる2-6)。しかしながらTAPPでは腹膜やCooper靱帯近傍などの鼠径床の剥離操作の困難性や脈管・神経の臓器損傷や剥離層の誤認による出血や機能障害などの合併症を起こす可能性が指摘されている。これらの問題点を解決する方法の1つとして鼠径部の腹膜前腔に麻酔剤希釈液を注入する膨潤法の有用性が報告されている7-9)。腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術におけるRPSにはアクセスポートを1つにまとめるTAPP(単孔TAPP)と各鉗子の径を減ずることによりポート創を小さくするneedlescopic surgeryによるTAPP(細径TAPP)がある。当院ではconventionalなTAPPと同様にco-axial setupでの手術操作が可能であることに加えて腹膜や筋膜の縫合が不要であることが術後疼痛の緩和に寄与するという観点から細径TAPPを選択している10)。
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