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禁断の続編は列車が山中に突然停止したことから再開する。時刻から愛知県内であろう。雨は降っているが土砂崩れではなさそうである。電車の故障も否定的だ。ならば人身事故であるが,草木も眠り丑三つ時可能性は低く,第一パトカーなど来ていないようである。かれこれ1時間以上同じ場所に停止している。もしかすると三回忌出席は叶わぬかもしれぬ。するとだしぬけに列車が低速で動き出した。安堵するが,どうも動きがおかしい。果たして,周囲が少し拓けたところで再度停車。また動かなくなった。この時点で筆者は原因をある程度推察することとなる。本業では鑑別診断など不得手中の不得手であり,何を見ても “湿疹” などと低い洞察力であるが鉄道は滅法強い。上記の記載のみで列車停止理由を正しく推察できる皮膚科専門医は全国に何人存在しようか! 原因はおそらく動物との接触であろう。警察が来ていないのも理由の一つである。動物と接触は乗務員にとって誠に厄介であり,まず得体のしれない動物を列車から離さなければならぬ。巨大な動物であれば重さはかなりなものであり病気を持っているかもしれぬ。さらに生きていれば襲われる危険もある。そして,その後車両を詳細に点検し安全運行ができるか否かを判断せねばならない。おそらく最初の停車地点が衝突現場で,動物を移動させたのち拓けた地点まで列車を移動し点検したのであろう。悪いことにJR東海区間は車掌1人乗務であり,14両編成の長い電車を運転士と2人で運行せねばならぬ。90分程度経過したころ,列車は再度動きその後は特急らしい走りを始めた。米原に到着。旅客は降りられぬがホームでは奮闘したJR東海車掌がJR西日本車掌との交代の打ち合わせに余念がない。しかし,筆者には緊急事態である。これでは11時から開始される法事にはまず間に合わぬ。特急券は2時間の遅延で払い戻しであるが,これまた90分と微妙だ。
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