憧鉄雑感
第113回 緊急! 皮膚生検術
安部 正敏
1
Masatoshi ABE
1
1医療法人社団 廣仁会 札幌皮膚科クリニック
pp.1441-1441
発行日 2021年8月1日
Published Date 2021/8/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000002805
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東海道新幹線の運転士が腹痛のため,運転資格をもたない車掌を運転席に呼びトイレに行った事件は大きく報道された。その直後には,JR九州で運転士が生理現象のため見習運転士に運転を任せた事例が続いた。両者とも安全上は大きな問題はない。特に新幹線は,通過線のない熱海駅での減速区間を抜けてから離席しており,車掌はあくまで監視のみで運転操作は行っていない。新幹線運転士は前方注視義務はなく,車掌には緊急ブレーキを操作する権限がある。見習運転士とて危険を察知すればすぐに停車することが可能だ。今回,世論は概ね新幹線運転士に同情的であったが,あくまで問題は運転士が運転指令に報告しなかった点である。仮に指令に報告した場合,当然最寄駅停車指示の可能性が高い。しかし,その三島駅待避線にはこだま705号が停車中であり,その次の新富士まで腹痛を堪えるのは無理だったのであろう。さらに,臨時停車での遅延を避けたいのは当然である。一部マスコミは鉄道の時間厳守至上主義を非難するがとんでもないことである。各列車乗務員がプロのスキルで個々の列車を定時運行し,列車同士の接続をはじめとする,鉄道全体のシステム構築を行っている。報告は大事だ。正論ではあるが,運転士が,“トイレに行きたい”との指令への報告を躊躇するのは痛いほど理解できる。
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