憧鉄雑感
第138回 皮膚科外来化粧品販売の是非
安部 正敏
1
Masatoshi ABE
1
1医療法人社団 廣仁会 札幌皮膚科クリニック
pp.1591-1591
発行日 2023年9月1日
Published Date 2023/9/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000004170
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筆者も皮膚科医である以上,時に化粧品の質問を受ける。フレンチシェフにクリーニングのアドバイスを求めるが如き愚行であるが,要は筆者の知識不足が原因であり当然患者に非はない。ただ,最近ダーマコスメ関連の臨床試験に関与することとなり,僅かながらマシになった。なお,当院では化粧品類の販売は殆ど行っておらず信頼できる会社のサンプルを差し上げる程度に留まっている。無論,院内での製品販売の要望は少なくなく様々な担当者が面会に来る。不思議とどの製品を用いても “魔法のように皮膚が若返り” かつ “奇跡のような皴のない美肌が得られる” とのことであり,深夜のスッポンエキス通販番組を見る思いである。試しに,“スッポンエキスを飲んでも同じ効果が得られますか?” と訊くと自社製品のほうが圧倒的に効果は高いという。ではエビデンスを問うと,“先生はそもそもスッポンがお好きで?” など頓珍漢な答えだ。ちなみに筆者は一度だけスッポンを食したことがある。まず生血を飲まされるが,そもそも献血が趣味である筆者はいい気がしない。“本日は特別に心臓を用意しました。まだ動いています! そのまま召し上がれます!” などと大将は得意顔であり,同席した若手に押し付けようとするも,敵もさるもの “こんな珍しいものは是非先生が! 私など滅相もございません” などと遠慮されてしまい,安からぬ対価を払って何故斯様な罰ゲームを受けねばならぬのかよくわからぬ。
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