憧鉄雑感
第146回 セカンドオピニオン
安部 正敏
1
Masatoshi ABE
1
1医療法人社団 廣仁会 札幌皮膚科クリニック
pp.661-661
発行日 2024年5月1日
Published Date 2024/5/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000004566
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外来診療において,医師たるもの問診表を前に暗澹たる心境となる経験がしばしばであろう。次の患者は昨日他院で “中毒疹” と診断され,診断や治療のセカンドオピニオン目的なんぞと書いてある。尤も通常の保険診療を欲しており,そもそも医療機関にとってセカンドオピニオンには保険はきかぬのがメリットであり半ばサービス診療となる。筆者は,不適切診療をされているならいざ知らず前医の診断を否定し治療方針を大転換するなど皮膚科専門医全体の評価を下げる愚行であると考えており,最もセカンドオピニオンに適さぬ医師であろう。偉そうなことを書いたが,それ以前に筆者は皮膚科専門医としての技量が最低レベルであることを自覚しており,他の名医が定めた方針を否定するなんぞまさに縁木求魚なのである。“昨日中毒疹と言われました” と患者。“左様ですな~” “ステロイド内服を出されましたが……” と患者。“至極当然ですな~” “ウイルスや薬剤が原因と言われました” と患者。“ご尤も!” “今内服している薬を止めるように言われましたが飲んでもいいですか?” と患者。“やめるべきですな~” 診療開始時点で筆者は既にサトリを開いてしまっており,前医の正当性を滔滔と諭した。この場合,多少高圧的に接するのがポイントである。医療は信頼関係こそ大切であり,筆者の役割はこの患者が前医を信頼し診療完遂に導くことである。
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