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角膜は高い強度と屈折力を持つ透明な組織である。角膜は3層の保護構造により,内部の眼組織を外部からの創傷や感染から保護している。最外層には上皮があり,その後ろに主にコラーゲン線維とプロテオグリカンからなる弾性で透明かつ屈折性の実質が続き,後方には角膜の水和を調節する単層内皮がある。角膜上皮は外界からの侵襲に対する防護やバリアとしての機能が重要である。一方,角膜内皮細胞はNa+/K+-ATPaseによる水ポンプ作用が重要であり,実質中のプロテオグリカンによる吸水力とバランスをとり,適切な含水量を維持することにより角膜実質の透明性を保っている。角膜実質は,均一な直径を持つコラーゲン線維が規則正しく配列することにより角膜の透明性や形状の維持に極めて重要な機能を果たしている。角膜実質細胞(角膜線維芽細胞)は角膜実質のコラーゲン線維の間に散在しており,その総体積は角膜実質体積全体の2~3%を占める。角膜実質細胞は正常では静止状態を保っているが,年齢とともに少しずつ減少していく。角膜実質細胞数は角膜中央部で平均約20,000cells/mm3であり,角膜実質層の前部10%で最も密度が高い1)。このことは上皮のバリアが破綻した際,実質前層の生体防御が重要であることを示唆しているのかもしれない。角膜線維芽細胞は角膜実質を構成するコラーゲンとプロテオグリカンを生成する。角膜実質には,主にⅠ,Ⅴ,Ⅵ,Ⅻ型コラーゲン,デルマタン硫酸側鎖を持つプロテオグリカンであるデコリン,ケラタン硫酸側鎖を持つプロテオグリカンであるケラトカン,ルミカンなどが含まれる。正常角膜では,角膜線維芽細胞は細胞間gap junctionにより周囲と接合することにより3次元的な網目構造を形成しており,gap junctionにより同期性を保有していると考えられる(図1)。さらに角膜線維芽細胞は単核貪食細胞系細胞のような貪食能を有しており,生体防御や創傷治癒にも深く関わっているが,コラーゲンに囲まれていることにより,細胞の樹状突起伸長部とコラーゲン線維との絡み合いが起こり,貪食能力を妨げているという報告もある2)。
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