症例報告
上眼瞼のMerkel細胞癌に対してアベルマブ全身投与を行うも,免疫関連有害事象により急死した1例
竹内 正興
1
,
盛 秀嗣
1
,
佐々木 香る
1
,
髙橋 寛二
1
,
石田 光明
2
1関西医科大学眼科学教室
2関西医科大学病理学講座
キーワード:
Merkel細胞癌
,
免疫関連有害事象
,
Merkel cell carcinoma
,
immune-related adverse events
Keyword:
Merkel細胞癌
,
免疫関連有害事象
,
Merkel cell carcinoma
,
immune-related adverse events
pp.675-680
発行日 2022年7月5日
Published Date 2022/7/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002701
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高齢者の上眼瞼に発赤を伴う腫瘤を認めた場合,霰粒腫や脂腺癌が疑われることが多い。今回我々は,上眼瞼の発赤を伴う腫瘤を霰粒腫と臨床診断したが,病理組織診断の結果Merkel細胞癌であった症例を経験したので報告する。
患者は83歳男性。X年Y月頃から右上眼瞼の腫瘤が徐々に増大し,同年Y+1月関西医科大学附属病院を紹介受診となった。右上眼瞼耳側に8×6mmの赤色調の腫瘤を認めた。既往歴に肺癌があったため,肺癌の転移もしくは霰粒腫を疑い,確定診断のために同月に右上眼瞼腫瘍部分切除術を施行した。術中腫瘍の内容物は粥状分泌物を呈した。組織切片のHE染色では,腫瘍内部にN/C比の高い類円形核の異型細胞の増殖を認めた。免疫染色ではCK20,AE-1/3,chromogranin A,synaptophysinの陽性所見,CD45,TTF-1,P40,PD-L1の陰性所見を認めた。以上の組織所見から,右上眼瞼Merkel細胞癌と確定診断した。その後Merkel細胞癌の縮小を目的としてアベルマブの全身投与を行ったが,免疫関連有害事象(immune-related adverse events:irAE)による全身状態の増悪により,同年Y+3月永眠された。
上眼瞼に発赤を伴う腫瘤を認めた際には霰粒腫や脂腺癌を疑うが,本症例のようにMerkel細胞癌である可能性もまれにある。また,Merkel細胞癌に奏効すると考えられているアベルマブについても,本症例のように重症のirAEを生じることがあり,注意を要する。
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