症例報告
うっ血乳頭の原因として脳静脈洞血栓症との鑑別を要した特発性頭蓋内圧亢進症の2例
高井 康行
1,2
,
坂西 良仁
1
,
久米 泰治
1
,
井上 賢治
2
,
海老原 伸行
1
1順天堂大学医学部附属浦安病院眼科
2医療法人社団済安堂井上眼科病院(東京都千代田区)
キーワード:
うっ血乳頭
,
特発性頭蓋内圧亢進症
,
脳静脈洞血栓症
Keyword:
うっ血乳頭
,
特発性頭蓋内圧亢進症
,
脳静脈洞血栓症
pp.1091-1096
発行日 2021年11月5日
Published Date 2021/11/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002340
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特発性頭蓋内圧亢進症はうっ血乳頭の原因のひとつであるが,頭蓋内病変がなく診断に苦慮することがある。特に脳静脈洞血栓症との鑑別が重要である。頭部MRV(magnetic resonance venography)において横静脈狭窄を伴った特発性頭蓋内圧亢進症の2症例を報告する。
症例1は27歳女性。数週間で増悪する頭痛と両眼の霧視を訴え受診した。両眼の軽度の視力低下とMariotte盲点の拡大に加え,眼底は強いうっ血乳頭がみられた。髄液圧は480mmH2Oと上昇し,MRI(magnetic resonance imaging)で両側眼球後面強膜の平坦化や視神経鞘の髄液腔の拡大を認めた。アセタゾラミド1,000mg内服と体重の減量を開始し症状やうっ血乳頭は改善した。症例2は7歳男児。間欠的な頭痛と内斜視が徐々に増悪し受診した。Mariotte盲点の拡大に加えて,うっ血乳頭がみられた。髄液圧は560mmH2Oと上昇し,視神経鞘の蛇行や髄液腔の拡大を認めた。髄液検査後に症状は改善し,治療介入なしで数か月後にはうっ血乳頭も軽減した。2例ともMRVにより横静脈狭窄を認めたが,画像上血栓像はなく,血液凝固異常もなかったため,頭蓋内病変や閉塞病変がないことも併せて特発性頭蓋内圧亢進症の診断に至った。
うっ血乳頭の原因として特発性頭蓋内圧亢進症を鑑別に入れるべきである。治療方針が異なるため脳静脈洞血栓症との鑑別は慎重に行うべきである。
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