症例報告
強膜炎治療中に生じたPenicillium属による若年者重症角膜真菌症
小野 大地
1
,
中尾 功
1
,
江内田 寛
1
1佐賀大学医学部眼科学講座
キーワード:
角膜真菌症
,
Penicillium属
,
ステロイド点眼
,
強膜炎
,
若年者
,
角膜穿孔
Keyword:
角膜真菌症
,
Penicillium属
,
ステロイド点眼
,
強膜炎
,
若年者
,
角膜穿孔
pp.81-85
発行日 2021年1月5日
Published Date 2021/1/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002002
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強膜炎に対し0.1%ベタメタゾン点眼で加療中,コンタクトレンズ装用を契機に角膜真菌症を生じ,角膜穿孔に至った1例を経験した。
症例は23歳女性。原因不明の角膜混濁の診断で近医眼科より紹介され当科を初診した。左眼角膜中央やや耳上側に角膜陥凹を認め,実質浅層にカルシウム塩沈着と思われる白色混濁を伴っていた。長期使用していた0.1%ベタメタゾン点眼を中止しエデト酸ナトリウム(EDTA)点眼1日4回を処方した。2週間後,混濁は軽減していたが強膜炎を生じ強い眼痛を訴えた。0.1%ベタメタゾン点眼1日4回を再開しEDTA点眼と併用したところ強膜炎は沈静化し混濁も徐々に軽減した。その後,ソフトコンタクトレンズ装用の再開により角膜炎を生じ,角膜中央に既知の混濁を含む円形の淡い実質混濁を認め,混濁辺縁の一部に上皮欠損を伴っていた。0.1%ベタメタゾン点眼1日8回により上皮欠損は改善傾向となったが実質混濁は悪化した。アカントアメーバ角膜炎を疑って角膜擦過を行ったが,鏡検で糸状菌,培養でPenicillium属が検出された。0.1%ベタメタゾン点眼を中止すると病変は急激に拡大し約1週間後には角膜穿孔をきたした。緊急で治療的角膜移植を行い,現在まで感染の再発はみられない。Penicillium属による角膜真菌症は他の真菌に比べ進行が遅く典型的な角膜炎の像をとらない場合がある。若年者での発症はまれだが,長期のステロイド点眼投与,コンタクトレンズ装用といった環境下では角膜穿孔に至る角膜真菌症を生じうることを念頭に置く必要がある。
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